アジマティクス

ここをこうするとおもしろい

最近感銘を受けた日常の中の鳩の巣論法

5個の箱があります。

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6羽の鳩がいます。

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6羽の鳩が5個の箱に全員入ったとします。

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少なくとも1つの箱には、2羽以上の鳩が入っているということがわかります。

これが鳩の巣論法です。

一見自明だけど実はすごい

そう言われるとあたりまえですが、この事実を幾何学から数論からかなり広い範囲の証明問題に応用することができ、論証法としてはメジャーどころです。例えば「一辺1の正方形の内部に5つの点を打ったとき、距離が\frac{\sqrt{2}}{2}以下になる2点が必ず存在する」なんてことも証明でたりするんです。なかなか強力でしょう? 一応wikipediaも貼っときます→鳩の巣原理 - Wikipedia

この鳩の巣論法のように、「具体的なことは何もわからないが、少なくとも○○ということだけは言える」といったタイプの論法に、私はなんだかグッときてしまいます。

「具体的にどの箱にどの鳩が、みたいなことはわからないけども、少なくとも『少なくとも1つの箱には、少なくとも2羽の鳩が入っている』ということだけは確実に言える」。すごいですよね。少なくともオンパレードですもんね。わからない問題に対して、「少なくともここまでは確実に言える!」ということを少しずつ明らかにするような形でその問題に挑むなんて、有限の立場に押し込められた人類の叡智を感じます。

 

さておき。最近twitterとかみてて「これまさに鳩の巣論法じゃん!」と感銘を受けた事例を2つ紹介します。

「鳩の巣論法を使えばこういう問題も解ける!」的なやつではありませんのであらかじめご了承ください。たぶんそういうのは他所のブログとかにいっぱいあります。

エレベーター

まずはこちら。

うおおおおお!確かに!!!

そんなこと思いもよりませんでした。自分で気づきたかった感がありちょっと悔しいです。もし自分がエレベーター乗ってて「あっこれどこかの階で必ず二人以上降り…これ鳩の巣論法やん!!!」って気づけたら興奮するでしょうね。このツイート見て以降、エレベーター乗るたびにソワソワするようになったことは言うまでもありません。

なんでや!

もう一つはこちら。

ええと、まあその、twitterにはですね、深夜3時34分ピッタリに「334」ってツイートしたやつが強い、みたいな文化があってですね、0コンマ何秒を争う熱い戦いが日夜繰り広げられていましてですね、そんでどねさんっていうのは私のフォロワーの方なんですが、まぁこの日はその方が「334」ってツイートした時間が03:34:00.005だったというわけです。それで6位だったと。

はい! ほら! 鳩の巣論法ですよね! わかりますか!

つまり、この競技(?)では3:34より先にツイートした人は認められないので、6位で+00.005ということは0.005秒の間に6人がひしめいていることになるわけです。0.001秒を箱、人を鳩だと考えて、「(少なくともどこか1つの0.001秒間では)2人以上が同着だった」といえるわけなんですよ! ね! 鳩の巣論法でしょう!

※追記:+0.000秒が1位なんだから+0.005で6位なんだったら0.000、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005って6人でぴったり収まるじゃんってご指摘を受けました。そのとおりですね。0.000秒のことを忘れていました。でもそれだとこの話成り立たなくなっちゃうから「6位が+0.004秒だった」みたいなことに脳内補完してください!「この事実に鳩の巣論法を見出すことができるよ」っていうこと自体は間違ってないですから!すいません!

気をつけるべきことがある

これが例えば「0.005秒の間に4人がゴールした」のように秒数より人のほうが少なかった場合、鳩の巣的に考えるなら「4人の人物に6つのゴールタイムを割り当てた」みたいな考え方ができるかもしれませんが、これは成り立ちませんよね。1人の人間が2つ以上のゴールタイムを持つことはできないからです。

実際の数学の問題なんかで鳩の巣論法を使って考えるときは「どっちが箱でどっちが鳩か?」を意識することが大事になってきます。単に多い方を鳩としたのでは成り立たないこともあるのですね。それを教えてくれるなかなかいい例だったといえるでしょう。

もしかしたらあなたの隣にも

日常の中に数学を見つけると興奮しますよね。このように、日常生活の中で数学的に解釈できるとか、数式で表せるとかいったものを見つけるたびに人知れず興奮してる人がこの世にはいます。こわいですね。気をつけましょう。

 

最後に、鳩の巣論法の根本的なところが気になった人がtwitterにいたみたいで、そのときのツイートをまとめたものがあるようですので貼っておきます。よろしければご一読ください。

togetter.com