です。アンサイクロペディアにもそう書いてあります。
内容はタイトルの通り、「とは等しい」ということをあの手この手で証明してみた記事なのですが、それにしてもこの記事が面白いのです。もちろん、数学的には一つ残らず間違っているわけですが、「どこが、なぜ間違っているのか」を考えるととても勉強になるような項目もあって、間違いだからといって簡単には見過ごせません。
よっしゃ! だったら片っ端から間違いを指摘してやる! かかってこいや!
タイプに分類
間違いはいくつかのタイプに分類されるように見えます。ひとまず記事に書かれている順番通りに見ていきましょう。
タイプ1
四捨五入を利用した証明[編集]
- 1.45を小数第2位で四捨五入すると 1.5
- これを小数第1位で四捨五入すると 2 ……A
- 一方、1.45を小数第1位で四捨五入すると 1 ……B
- A、Bより
- 1.45 = 1 = 2
「を四捨五入すると1」から「」を導いているところが間違いです。そんなわけないですよね。これは「等号でつないではいけないものをつないでしまったタイプ」といえます。「等号タイプ」とでも呼びましょう。
どんどんいきます。
タイプ2
あまりを利用した証明方法[編集]
- 3 ÷ 2 = 1 あまり 1
- 5 ÷ 4 = 1 あまり 1
- 2つとも答えが同じなので
- 5 ÷ 4 = 3 ÷ 2
- 両辺に4を掛けて
- 5 ÷ 4 × 4 = 3 ÷ 2 × 4
- 整理すると
- 5 = 6
- 両辺から4を引くと
- 5 - 4 = 6 - 4
- 1 = 2
「2つとも答えが同じなので、」のところがまずいですね。残りの部分はただそこから に持って行こうとしているだけです。
これは「aならばc、bならばc。よって、a=bタイプ」といえるでしょう。この文は論理的には間違っています。「aさんは25歳。bさんは25歳。よって、aさんとbさんは同一人物」と言っているようなもんなわけです。等号タイプに含まれるのでそう呼んでも差し支えないですが、区別のためこれを「全射タイプ」とでも呼びましょう。
このへん、ちょっと詳しく見てみます。これは関数でいうと「、、よって、」と言っていることに相当します。例えば、関数をとしてみると(になんか数を入れると二乗して返してくれる関数という意味)、「、、よって、」と言っていることになります。
全射タイプの例を作るのは意外と簡単で、つまりは以下のように「横に同じ値がある」グラフを描く関数を探す、というのが一つの方法です。
これでいっちょあがりです。三角関数とか、絶対値なんかも横に同じ値があるので使えそうです。
次。
タイプ3
たし算を利用した証明方法[編集]
- 0 = 0 + 0 + 0 + …
= (1 + -1) + (1 + -1) + (1 + -1) + … = 1 + (-1 + 1) + (-1 + 1) + (-1 + … = 1 + 0 + 0 + 0 + … = 1
- このことから
- 0 = 1
- 両辺に1を足して
- 1 = 2
数の無限和は、足す順番を入れ替えていいやつ(絶対収束)とダメなやつ(条件収束)があります。上記のものは、入れ替えたらダメなやつを入れ替えてしまっているためにおかしなことになっているわけです。
実は「足す順番を入れ替えたらダメなやつを入れ替えて足すと、任意の数にできる」という定理があり、「リーマンの再配列定理」と呼ばれたりするようです。
こちらのブログの以下の記事に詳しい解説があります。
「無限」というものを考えると、いろいろとおかしな、しかし興味深い事実に遭遇することがあります。ちょっと大ざっぱですが、上記のものを「無限が関わっているタイプ」、ちぢめて「無限タイプ」とでも呼びましょう。
タイプ4
かけ算を利用した証明方法[編集]
- 0 = 0
- 0に何を掛けても0なので
- 1 × 0 = 2 × 0
- 両辺を0で割り
- 1 = 2
出た! 出ましたよ!! 「両辺を0で割」ってる!! はっきり言っちゃってる!!!
......「ゼロ除算タイプ」です。数を0で割ったらダメ🙅
なぜゼロ除算がダメなのかについては以下の記事がわかりやすく、詳しいです。
端的に引用して説明すると、「」であるようなを考えたとき、この式は「」と変形できるので、いやそのってどんな数入れてもこの式成立させられないじゃんダメだよこれダメダメはいゼロ除算ダメでーす、みたいな感じです。
ニコ百の数学系記事はたまに侮れません。
どんどん見ていこう
さて。これまでで主要な「間違いの原因」のタイプは出揃いました。「等号タイプ」「全射タイプ」「無限タイプ」「ゼロ除算タイプ」です。
ここから先はこれらのタイプを当てはめて考えれば、だいぶ見通しが良くなるはずです。見ていきましょう。
わり算を利用した証明方法[編集]
- 0 = 0
- 0 ÷ 1, 0 ÷ 2は共に0であるからして、
- 1 = 2
一見、「ゼロ除算タイプ」のようですが違います。「全射タイプ」ですね。
「」という関数のにを入れてもを入れても。よって 。という論法です。さっきの感じで言うとこういうことです。
ね? 「全射タイプ」でしょう?
9で割る証明法[編集]
- 1 ÷ 9 を計算すると
- 1 ÷ 9 = 0.1111111111111…
- 両辺に9を掛けると
- 1 = 0.9999999999999…
- さらに両辺に10000000000000…を掛けると
- 9999999999999… = 10000000000000…
- 両辺から999999999…を引くと
- 0 = 1
- 両辺に1を足して
- 1 = 2
「無限タイプ」ですが、「さらに両辺にを掛けると」 のところがヤバいですね。なんでしょうこの謎の数。現代の数学ではおそらくこういう数は考えられてはいませんが、ちゃんとした概念として成り立つようにこの数を導入させる方法を考えるのも楽しいかもしれません。
初等代数を使った証明1[編集]
- b = a
- とする。この両辺に a を足すと
- a + b = 2a
- 両辺から 2b を引くと
- a - b = 2a - 2b
- (a - b) = 2(a - b)
- 両辺を (a - b) で割ると
- 1 = 2
有名なやつですが、初見では多くの人が騙されるのではないかと思います。
一行目、ということは式変形するとですよね。にも関わらずで割っている箇所がある。そう。「ゼロ除算タイプ」です。
初等代数を使った証明2[編集]
- b = a
- とする。この両辺に a をかけると
- 両辺から を引くと
- 因数分解して
- (a - b)(a + b) = b(a - b)
- 両辺を (a - b) で割ると
- a + b = b
- 両辺からbを引いて
- a = 0
- 両辺をaで割って1を足すと
- 2=1
- 両辺を入れ替えて
- 1=2
「ゼロ除算タイプ」です。しかしよくできてますね。なんとかで割れるように腐心したという感じでしょうか。
ひき算を利用した証明[編集]
- 1 - 3 = 4 - 6
- 両辺に 9/4 を加えると
- 式を変形すると
- 両辺を因数分解して
- 両辺の平方根をとって
- 両辺に3/2 を加えると
- 1 = 2
両辺の平方根をとって
のところがマズいですね。巧妙に隠されていますがこの前段階のカッコの中身を計算するととなり、先述の「全射タイプ」であげた例と同じです。平方根をとるときはちゃんとプラスマイナスをつけようね、というお話でした。
連立方程式を利用した証明[編集]
- 次のような連立方程式がある。
- (A) × 4 + (B) より
- 0 = -1
- 両辺に 2 を加えると
- 2 = 1
- 両辺を入れ替えて
- 1 = 2
連立方程式を正直に計算すると、
と、が互いに矛盾する二つの値になります。。これは変形していくと任意の二数を等号でつなぐことができ、ここでは「ゼロ除算タイプ」と同じことが起こっています。
絶対値を利用した証明[編集]
- 1/2=|1/2|より
- |1/2|=±1/2より
- 両辺に3/2を加えると
- 1 = 2
「|1/2|=±1/2」だからといって、絶対値記号を外すときにかたやプラス、かたやマイナスとされては困ります。「全射タイプ」ですね。
階乗を使った証明その1[編集]
- 0! = 1
- 1! = 1
- 従って
- 0 = 1
- 両辺に1を足すと
- 1 = 2
お手本のような「全射タイプ」です。
階乗を使った証明その2[編集]
- 3! = 2! ×3
- 両辺を ! で割って
- 3 = 2 × 3
- 両辺を 3 で割って
- 1 = 2
「両辺を!で割って」!!! パワーワードです。素晴らしいですね。勢いを感じます。この記事自体が全体的にこのような勢いにあふれていて最高です。
組み合わせを利用した証明方法[編集]
- 3個のものから1個を選ぶ組み合わせは
- 3C1 = 3 通り ……A
- 3個のものから2個を選ぶ組み合わせは
- 3C2 = 3 通り ……B
- A,B より、1個選んでも2個選んでも変わらないので 1=2 である。
「全射タイプ」です。
背理法による証明[編集]
- 1 ≠ 2
- と仮定する。両辺に0を掛けると、
- 0 ≠ 0
- これは明らかに誤りである。つまり仮定も誤りとなる。従って
- 1 = 2
「ノットイコール」を「イコール」と同じようなものとして扱ってしまったがために起こった悲劇です。
イコールならば、「両辺に同じものをかけても同じまま」は成り立ちますが、ノットイコールの場合「両辺に同じものをかけても違うまま」とは限りません。上記の例がまさにそれですね。
ちょっとこれはどのタイプにも当てはまりそうにないですね。とはいえこのほかにも解釈の仕方はありそうです。みなさんの意見お待ちしています。
最大値を使った証明[編集]
- すべての整数の中で最大のものを A とおく。一般に、
- A + 1 ≧ A
- A は最大の整数だから、
- A ≧ A + 1
- ゆえに
- A = A + 1
- 両辺から A-1 を引くと
- 1 = 2
無限に存在する整数の中に最大のものがあるとしている時点で矛盾です。矛盾を見つけるだけではなく、その矛盾からどのようにして「」に持っていけるか考えることは、もしかしたら楽しい営みかもしれません。この例では非常にうまくやっていますね。矛盾をどう利用するかというのは、作成者の腕の見せ所でもあるのでしょう。
∞を使った証明[編集]
- ∞に1を足すと∞になる。
- ∞ + 1 = ∞
- また、∞に2を足しても∞になる。
- ∞ + 2 = ∞
- つまり、
- ∞ + 1 = ∞ + 2
- 両辺から∞を引いて
- 1 = 2
「無限タイプ」ですが、「∞」はそもそも数と同じように扱うことができません。「∞にを足すと∞になる」はいいのですが、「両辺から∞を引いて」はまずいのです。
一次関数を使った証明[編集]
- 直線 y = 2xを考える。
- 関数は従属変数と独立変数が1対1対応しているので、x座標の数とy座標の数は等しい。…①
- また、このグラフでは定義域[0,1]において値域は[0,2]である。…②
- ①②より、幅が1の区間と幅が2の区間に存在する点の数は等しい。
- よって、1 = 2
こんな感じです。
軸のからの範囲と、軸のからの範囲の値が一対一対応してるんだから点の個数も同じだろう、というわけです。これは実はその通りで、からまでに含まれる点と、からまでに含まれる点の個数は同じです(濃度が同じ、といいます)。
無限が関わってくるからそうなるのですが、「〜間と〜間とで点の個数が同じ、よって」ということなので全射タイプでもあります。複合タイプ「無限・全射タイプ」ですね。ここにきて思いがけずかっこいい感じのやつが登場してきました。
ここまで振り返ってみると「等号タイプ」がほとんどないですね。いいのです。等号タイプは「数学以外の理論を用いた証明方法」の節でたくさん出くわすことになります。
今日はここまで!
さて。今回はこんなところにしておきましょう。ていうかこれどこで止めても「ここで止めたのって次のやつがわからなかったからじゃね?」みたいな謂れ無き非難を受けそうですが、違います。ここまでにしておくのは、間違いを指摘する楽しみをみなさんにも味わってほしかったからです。次のやつなんかすごくわかりやすいです。あのタイプです。虚数のあたりからちょっと難しいですね。腕がなります。この記事が物足りなかった方は是非この先を自らの目で確かみてみるといいと思います。
やってみよう
今回の話の発端はこのツイート
1=2の証明久しぶりに見てみたけど、やはり俺が選ぶ一位はこれ。 pic.twitter.com/Ocm20vrgG6
— せきゅーん (@integers_blog) August 24, 2016
なのですが、これだけを大量に見せつけられていると自分でも作ってみたくなってきますね。
やってみました。
みなさんもどんどん新たなを作って、世界を混沌の渦に陥れましょう。