11月23日はフィボナッチ数列の日です。ハッピーフィボナッチ!
本場イタリアでは、街中にウサギやヒマワリなどの飾り付けをしてこの日を盛大に祝うらしいです。うそです。
フィボナッチ数列
フィボナッチ数列とはすなわち1,1,2,3,5,8,13...という数列のことであり、初項と第2項が1で、前2つの項を足したものが次の項になっているような数列のことです(wikipedia)。
この数列に関して、こんな図を目にしたことがある方も多いのではないかと思います。
最初に一辺の長さが1の正方形を2つ置いて、左隣にそれらに接するように一辺2の正方形を置く。次は上に3。右に5。下に8。左に13。というふうに、正方形をらせん状にくっつけていくと、その辺の長さがフィボナッチ数列になっているというものです。興味深いですね。
これの拡張として、正方形以外の形でもらせん状に配置することってできないのかな? と思うのは自然なことでしょう。それができるんですね。こちらをご覧ください。
正三角形もらせん状に配置することができるのです。こんどは最初に一辺1の正三角形を3つ置いてから始めています。この場合はそれぞれの辺の長さはどうなっていくでしょうか?
こうですね。1,1,1,2,2,3,4,5,7,9,12...という数列が出てきました。
話変わるけど
変拍子、最高ですよね。まずはこちらをお聴きください。
いやー、最高ですね。めっちゃノれますね。
で、この曲、お聞きの通り7拍子なんです。7拍子なのにこんなにノれるってすごくないですか! サビのところで8拍子に移行しますが、それはそれでドミナントモーションのような「緊張→緩和」感があって最高です。
7拍子を始めとした奇数拍子はノりにくいことが多いです。日本人のDNAに刻まれた4拍子のノリがそうさせるのかは分かりませんが、「一拍多い」または「一拍足りない」ように感じてしまうのです。
ではこの曲がこんなにノれるのは何故なのでしょうか?
これは持論なのですが、この7拍子が「2・2・3」に分かれているからではないかと思うのです。冒頭からベースとギターがタン タン タータ、タン タン タータっつって「2・2・3」のリズムを刻んでいるのがお聴きいただけると思いますが、そうなっていることがノりやすさに寄与しているのではないか、と。
7拍子のノリにくさの理由の一つに「長すぎる」ってのもあると思うんですよね。3とか4とかならいいけども7までいっちゃうとそれまでに何拍経過したか忘れちゃう。そしてノれない、という。だからこそ、2・2・3と短く区切ることにより拍子が捉えやすくなっているのではないかなあと思うわけです。
この曲は実はカバーでして、元はこっちです。
こっちもくそ最高(語彙力)なのですが、先程のアレンジを例として挙げたのは2・2・3の感じがわかりやすいかと思ったからです。
自然数を2と3との和で表す
ところで、「7」を「2と3」で分ける方法って「2・2・3」だけではないですよね。ほかに「2・3・2」「3・2・2」の全部で3通りの分け方が考えられます。ちょっとこちらをお聴きください。
ああ......。あまりのカッコよさに内臓が全部口から出そうです。7拍子でこんなにノれる曲ほかにないんじゃないかって気がしてきます。
この曲は基本的に2・2・3で展開されていきますが、注意深く聴くと途中で3・2・2に変わるところがありますね! 「7」の2と3への分割について耳でお分かりいただけるかと思います。
さて、自然数を2と3との和で表す場合の数(順番を区別する)が何通りあるかについて考えてみます。7のときは3通りでした。ほかの数についても考えてみると、
- 2のとき→1通り
- 3→1通り
- 4→「2+2」の1通り
- 5→「2+3」「3+2」の2通り
- 6→「2+2+2」「3+3」の2通り
- 7→「2+2+3」「2+3+2」「3+2+2」の3通り
- 8→「2+2+2+2」「2+3+3」「3+2+3」「3+3+2」の4通り
- 9→「2+2+2+3」「2+2+3+2」「2+3+2+2」「3+2+2+2」「3+3+3」の5通り
- 10→「2+2+2+2+2」「2+2+3+3」「2+3+2+3」「2+3+3+2」「3+2+2+3」「3+2+3+2」「3+3+2+2」の7通り
- 11→「2+2+2+2+3」「2+2+2+3+2」「2+2+3+2+2」「2+3+2+2+2」「2+3+3+3」「3+2+2+2+2」「3+2+3+3」「3+3+2+3」「3+3+3+2」の9通り
- 12→「2+2+2+2+2+2」「2+2+2+3+3」「2+2+3+2+3」「2+2+3+3+2」「2+3+2+2+3」「2+3+2+3+2」「2+3+3+2+2」「3+2+2+2+3」「3+2+2+3+2」「3+2+3+2+2」「3+3+2+2+2」「3+3+3+3」の12通り
1,1,1,2,2,3,4,5,7,9,12... という数列が出てきました。
ん?
んんん???
らせん状の正三角形から出てきた数列→1,1,1,2,2,3,4,5,7,9,12...
数の2と3での分割から出てきた数列→1,1,1,2,2,3,4,5,7,9,12...
いっしょやないか!! まるっきりいっしょやないか!!!
そうなんです。いっしょなんです。全く違うところから出てきた数列が全く同じだなんて、すごく不思議です。そしてなんだかワクワクします。素数調べてたら円周率が出てきたみたいな、数学からはこういう「思いがけないものどうしが実はつながっていた」という快感をそこかしこに見出すことができます。
ちなみにこの数列には「パドヴァン数列(Padovan sequence)」という名前がついています。ついているのですが、この数列、全く知名度がない!! 日本語版wikipediaに記事すらない!!! 中国語版にはあるのに! こんなに面白い性質を持つのになぜなんでしょうか。この記事がパドヴァン数列の知名度向上に一役買えていれば幸いです。
パドヴァン数列を生成する漸化式
さらに不思議な要素があるのですが、まずフィボナッチ数列と同じように、パドヴァン数列も「どこかの項とどこかの項との和が次の項」という形の漸化式として表すことができます。
らせん三角形の図を見ると、
基準の三角形の一辺は、らせんの配置上1個前の三角形の辺と5個前の三角形の辺との和になっていることがわかります。これは基準をどこにおいても同じです(ただし5個目の三角形以降)。そう考えると、番目のパドヴァン数は
と表されるはずです。
また、自然数を2と3との和の形で書いたものは、当然ですが2または3から始まります(例えば10は「2+2+2+2+2」「2+2+3+3」「2+3+2+3」「2+3+3+2」「3+2+2+3」「3+2+3+2」「3+3+2+2」)。2から始まる場合はその2を一つとっぱらうと、2つ前の自然数の「2・3和」と同じだけの数になります(10の「2・3和」のうち2から始まる「2+2+2+2+2」「2+2+3+3」「2+3+2+3」「2+3+3+2」から先頭の2をとっぱらったものは、8の「2・3和」そのものになる)。さらに、3から始まる場合はその3を一つとっぱらうと、3つ前の自然数の2・3和と同じだけの数になります。そう考えると、番目のパドヴァン数は
と表されるはずです。
もちろん、初項が何かということをちゃんと与えてあげないといけませんが、このように形の違う漸化式が同じ数列を生成するということなのです! 輪をかけて不思議!
おわりに
今回の記事はその不思議の秘密を紐解くとこまではいきません。こんな面白い数列があるよ! みてみて! っていう紹介がしたかっただけなのです。ちょっと考えただけでもこの数列に関して気になることがいくつか浮かんできます。
・2つの漸化式が同じ数列を生み出すのはなぜ?
・ほかの図形をらせん状に並べて数列を取り出すことはできないのかな?
・自然数を3と4との和で表すときの数列って?
・そもそも「2・3和」と「らせん三角形」が同じ数列を生み出す理由は?
よろしければみなさんも考えてみてください。
それでは、よいフィボナッチ・デイをお過ごしください。ハッピーフィボナッチ!