点を用意してxy平面上でぐるぐる回します。
その1段上(つまり高さ方向に1進んだ地点)に、1つめの点が1周する間に2周するような点を用意します。
3段目には、1つめの点が1周する間に3周するような点を置きます。
段目には周するような点を、そうですね、60個程度重ねてみましょう。
ウオエアなんだこれ!!! めっちゃきもい!!! 楽しい!!!!!
隣の点を線分でつないでみるとこんな感じになります(gifアップロード容量制限により途中まで)。
う〜ん気持ち悪いですねぇ〜
特にこの、
動き始めの部分がめっちゃきもい
ほら。ニュンってなってきもい
それぞれの点は、単にずっと同じ速度で回転しているだけです。ただそれだけなのにこんなに気持ち悪くなるなんて面白さを感じます。
キャンプファイヤーみたいなやつ
今回の制作物は3Dで、めずらしくz軸があるんですよねえ。いままでフーリエ装置や人体模型などいろいろなものを作ってきたアジマティクスですが、当ブログに奥行きが出たのはこれが始めてです。
んで今回もこんなの作ったよ! 楽しい! ってだけの記事でもよかったんですがせっかくなのでいくつか気になる点を見ておきましょう。
動き始めのキモさも確かに魅力的ですが、それ以外にもやっぱりキャンプファイヤーみたいな構造がときおり現れるのが気になります。
これとか。
こんなのとか。
ぐるぐるしてる中、急にこの形が現れるのはなんだか「無秩序の中に突然現れる秩序」みたいな感じで萌えます。いやもちろん無秩序ではないんですが。
なぜこんな構造が現れるかと言えば、これは各点が一番下の点の「整数倍」の速度で回っているからです。
たとえば一番下の点が1/3回転した位置にいるとき、2倍の速さで回る2番めの点は2/3回転した位置にいます。3番目の点は3/3=1回転しています。
4番目→1+1/3回転
5番目→1+2/3回転
6番目→2回転
7番目→2+1/3回転
8番目→2+2/3回転
9番目→3回転
...
となり、3つごとに同じだけ回転した場所に点が位置することがわかります。一番下の点が1/4回転した位置にいるときは4つごと、1/5なら5つごとの位置に。高さだけ違えて同じ位置にあるわけなので、点が縦にまっすぐ並んで、ああいうキャンプファイヤー的な構造が出現していたというわけなのですね。
これはそれぞれが「整数倍」の速さで回っているからにほかなりません。ためしに番目の点を倍速で回るようにしてみます。無理数倍です。
ぜんぜんキャンプファイヤーになってくれない!
また、キャンプファイヤーが出現するのは一番下の点が1/3回転、1/4回転、1/5回転...などの位置に来たときなので、さっきの動画をよく見てると、
この図のようなタイミングでキャンプファイヤーが現れることがわかります。ぜひ注目してみましょう。
話変わるけど
植物にとって、光は大事です。文字通り生命線です。
ぐるぐる回っている点を「葉っぱ」だと捉えます。そうすると、点が縦に揃ってしまったとき、上からの光が下の葉っぱに当たらなくなり困ってしまいます。こういうことです。
できるだけまんべんなくすべての葉っぱに光が当たるようにするには、葉っぱにどれくらいの角度をつければいいのでしょうか?
なに唐突に葉っぱの話始めてんのって感じですが、これはつまりこのぐるぐるマシーンが葉っぱのモデリングにも使えそうだというわけです。せっかく作ったのでもう少し利用しておきましょう。
葉序(ようじょ)
茎に対する葉っぱのつき方のことを「葉序」といいます。ようじょ。
葉序には、茎の一つの節から何枚もいっぺんに葉っぱが生える「輪生」、節ごとに一枚ずつ角度をつけて生える「互生」などがあり、このマシーンではこの「互生」を表現できるというわけです。
当然、葉っぱ同士の角度によってどれだけ葉っぱに光が当たるかは変わります。葉っぱが一枚生えて、その生えた葉っぱになるべくかぶる面積が少なくなるように次の葉っぱが生えるには、180°、すなわち一周の1/2の位置に生えるのが最適です。もっとも遠い位置に生えればいいわけです。
しかしそれでは、そこからまた180°でさらに次の葉っぱが生えたときに、最初の葉っぱに丸かぶりしてしまいます。動画で図示するとこんな感じです。
これではあまり上からの光が当たりません。このような葉序のことを「1/2葉序」と呼びます。すぐに葉っぱがかぶってしまうのは、次のが1/3の位置に生えても同じです。3つごとに、1周した時点で丸かぶりしてしまいます。
ここで自然界に目を向けてみます。実際に上で挙げた「1/2葉序」や「1/3葉序」の植物も存在しますが、例えばスミレやアンズなどの植物は「2/5葉序」であることが知られています(葉序は植物によって決まっています)。これは「一周の2/5の位置に次の葉っぱが生える」という意味です。こうなります。
次の葉っぱが生えるまでに大きな角度がついていて、かつ1周目ではかぶらず、2周目の5枚目になってはじめて丸かぶりしています。
「3/8葉序」というのも実在します(キンギョソウなど)。
次の葉っぱが生えるまでに大きな角度がついていて、3周目の8枚目でようやく丸かぶりしています。「あとから生えてきた葉っぱが上からの光をさえぎらない」という点において、さっきの2/5葉序よりも優れているように見えます。
このほか、5/13葉序(5周した13枚目でかぶる、セイタカアワダチソウなど)、8/21葉序(8周した21枚目でかぶる、アカマツなど)があります(参考リンク)。
いろんな葉序があるんですねぇ。でもこの数字はいったいどこから来たのでしょう? 並べてみます。
1/2、1/3、2/5、3/8、5/13、8/21...
分子のみ→1,1,2,3,5,8...
分母のみ→2,3,5,8,13,21...
......
フィ......
フィ............
フィボナッチ数列やないか!!!!!!! またお前か!!!!!!!!
1,1,2,3,5,8,13...と、「前二つの数を足したやつが次の数」になっているような数列のことをフィボナッチ数列といい、当ブログでも過去に一度取り上げています。
「自然界にはフィボナッチ数列が隠れている」だなんて、その辺の適当な啓蒙書なんかにもよく書かれていてもはや食傷気味ですが、出てきてしまったのだから仕方ありません。自然界にはフィボナッチ数列が隠れています。生えてくる葉っぱがすでにある葉っぱになるべくかぶらないように進化してきた植物たちの叡智の結晶と言えるでしょう。
これ以外の葉序を持つ植物はあまり見つかっていないらしく、葉っぱのつく角度が基本的にフィボナッチ数列に従うという事実には「シンパー・ブラウンの法則」という名前まで与えられているそうです。それどころかフィボナッチ数列のことを「シンパー・ブラウン数列」と呼ぶことすらあるとかマジかよすごいなシンパーとブラウン
なぜフィボナッチ数列か?
べつに「3/7葉序」とか「5/16葉序」とかあってもよさそうなのになぜ自然界がフィボナッチ数列を採用しているのかについては調べてもちょっとよくわからなかったのですが、ためしに一周をに分割する位置に、次の葉っぱを生やすようなモデルを作って観察してみます(これはフィボナッチ数列の隣接二項間比の極限で、このような角度のことを「黄金角」といいます)。無理数なので、どれだけの葉っぱが生えても一つとしてピッタリ同じ位置に生えることはありません。
真上から見ています。なんというか、「絶妙に一番空いている位置に次の葉っぱが生えている」ように見えます。角度も大きく開いてるし。このちょうどよさが、植物たちにフィボナッチ数列を採用させている理由の一つなのかもしれません。
葉序ばっかり見ちゃう
葉序についての知識が入ったあとで外歩いてると、そのへんの道端とか、公園とか、街角に溢れる葉序が目に入ってくるんですよね。いままで葉序なんて気にとめたことなかったのに、ああこの葉序はこういうタイプだな、あの葉序はこういうタイプなんだな、と、見えなかったものが見えるようになり世界がちょっと広がるわけです。
葉序とはどこででも出くわすことができます。みなさんもこれを期に街角の葉序に目を向けてみたらよいと思います。